自転車がつくる未来の暮らし 
祇園祭の宵宵山・宵山は、リユース食器でごみゼロを実現しよう

コミュニティサイクルは日本で有効なのか?

2013年6月2日 9:08 PM

 ヨーロッパでの成功に刺激を受けて、日本でも各地でコミュニティサイクルの実験が行われている。富山の「アヴィレ」が先進事例として紹介されることが多い。フランスのJCドゥコーの子会社、シクロシティが運営し、自転車やポートの作りもパリの「ヴェリブ」等と共通の斬新なデザインだ。しかし実際に現地を見た人の話ではほとんど使われていないようだ。


富山市「自転車市民共同利用システム」より

 日本でのコミュニティサイクルの問題点として、次のことがよく言われる。

 日本で実施されるコミュニティサイクルは、自転車の台数が多いものでも300台程度、ポート数も十数カ所程度だ。富山の「アヴィレ」も自転車150台にポートが15ヵ所。

 パリの「ヴェリブ」はスタート時で自転車1万台にポートは750ヵ所。現在は25000台に1500ヵ所になっている。ヨーロッパでは、街の規模にもよるが、大きな街では自転車数千台規模で始めるのが普通だ。パリと富山を比較するのは酷かもしれないが、日本では東京や横浜で実験を行う場合でもせいぜい数百台規模。また、ポートが用意されているエリアも非常に限られている。

 コミュニティサイクルというのは、無料で利用できる時間を一回30分程度までにして、移動するときだけ利用し、自転車を降りてどこかに立ち寄る場合はかならず一度ポートに返すという考え方だ。だから利用できるのはポートから歩いてすぐの範囲に限られる。自転車を借りる地点と目的地の両方の近くにポートがなければ使えないわけだから、ポートの数が少ないと利用できるケースが非常に限られる。さらに台数が少ないとポートに行っても自転車がある保障がない。最悪の場合、どこかまでコミュニティサイクルで行って一旦ポートに返し、用事を済ませて帰ろうと思ったら自転車が無くて帰れない、ということもあるわけだ。あるかないかわからないものを仕事や通勤で使おうという人はいないだろう。そういうわけで小規模なコミュニティサイクルというのはほとんど利用されない。日本で実施されているコミュニティサイクルはほとんどがそれに当てはまるだろう。街のどこへ行ってもポートがあり、必ず自転車があるというのでないと使われないのだ。

 また、ヨーロッパでもコミュニティサイクルは自転車の利便性を高めるものではあるけれど、クルマから乗り換えることは想定されていないそうだ。使っているのはほとんどが元々歩いていた人か公共交通を使っていた人だ。そもそもママチャリタイプの自転車ではスピードが出ないので、歩く代わりになってもクルマの代わりにはならない。自転車は環境や健康にいいと言うけれど、車をやめて自転車に乗り換えるのが環境にいいのであって、歩くのや公共交通の代わりに自転車を使ったところで環境面からは何の意味もないし、ゆっくり走っていたら健康にいいわけでもない。むしろ歩くのを自転車に代えたら運動量が減って健康に悪いし、不法駐輪も増えていいことはないだろう。

 そして、実は日本でコミュニティサイクルが大々的に使われるともっと大きな問題を起こす可能性がある。日本の自転車事情は、ヨーロッパを始めとする他の国と大きく違うからだ。むしろ今はコミュニティサイクルが使われないことで助かっているのではと思う。次回はそのことを書きたい。

 コミュニティサイクルは日本で有効なのか?2

執筆者

合同会社自転車ライフプロジェクト 代表 藤本芳一


↑ページの一番上へ