ヨーロッパの子ども乗せ自転車
日本で子ども乗せ自転車というと、自転車の前や後ろに子供用シートを付けたものが思い浮かぶだろう。ヨーロッパでも次の写真のように同じようなタイプはあるのだが、少数派だ。
ドイツ カールスルーエにて
少し前までは、次のようなチャイルドトレーラーをよく見かけた。
ドイツ カールスルーエ
日本の子ども乗せ自転車だと高い位置に乗っているので、ひっくり返りやすいが、これだとひっくり返ることはない。でも高さが低くてトラックなどの大型車からは見えにくいので、写真のように旗を立てている。
日本でも最近は販売されていて、徐々に売れるようになっているとは聞くが、こういう自転車が走れる環境がなかなかないので、まだまだ一部だけに留まっているようだ。
カーブのときにぶつけるのではないかと心配になるが、試乗させてもらったところ、トレーラーの幅は自転車のハンドルの幅以内に押さえられていて、自転車が走ったのと同じ位置をうまくトレーラーも通るようになっている。
しかし、乗っている最中に後ろがどうなっているのかわからない、という問題があって、ヨーロッパでは既に主流はこれから紹介するようなタイプに移っている。
まずは、オランダでよく見かけるバック・フィッツ(箱付き自転車)。
アムステルダムにて
子どもだけではなく、荷物も載せられる。時には大人も乗っている。
なお、箱の横に赤い丸の「MacBike」と書かれたシールが貼られているが、MacBikeというのはアムステルダムで最大手のレンタサイクル店だ。レンタサイクルで気軽にこういう自転車も借りられるということだ。
次は、オランダで有名な自転車メーカー「ガゼル」の子ども乗せ自転車。
子どもや荷物を載せないときは閉じておくことができる。
ベルギー アントワープにて
そして、ヨーロッパでも一番多彩な子ども乗せ自転車が見られるのが、デンマークのコペンハーゲンだ。
クリスチャニア・バイクとニホラがよく知られている。
クリスチャニアというのは、コペンハーゲン市内にある元ヒッピーのコミュニティで、そこでエコな暮らしをするために車が無くても荷物が運べるように作られたのがクリスチャニア・バイクだ。今では多く輸出もされてクリスチャニアの大きな収入源になっている。最近は電動アシスト付きもある。
クリスチャニア内にある工場を覗かせてもらった。工場と言うより工房といった程度の規模だが、現在は市の郊外にもっと大きな工場があるらしい。
次はニホラ。こちらもコペンハーゲン市内でよく見かける。
他にもいろいろなタイプのものが走っている。
見にくい写真で申し訳ないが、ハンドルを切ると後輪が向きを変えるようになっている。機構としてはこのほうがシンプルになるが、乗りにくくないのだろうか?
日本でこのような自転車が普及しない理由は、「走れる環境がない」というのが一番大きいだろう。
自転車は一応車道を走ることになっているのだが、特に子供を乗せている場合、現実問題として歩道を通るしかないことも多い。日本では「自転車通行可」に指定されている歩道を通れるのは「普通自転車」だけで、これは最大長さ190cm、幅60cmに制限されている。トレーラーを引いたり、大きな箱が付いていたりしても車道を走っている限りは違反にはならないのだが、歩道を通れないとなると特に街中で使うのは難しいだろう。日本ではチャイルド・トレーラーでさえも、なかなか使えないのにヨーロッパはさらにその先を行っている。
日本でも、早くこのような自転車が走れる時代が来て欲しいものだ
執筆者
合同会社自転車ライフプロジェクト 代表 藤本芳一
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