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こんなに違う。日本とヨーロッパの自転車

2013年12月1日 9:49 AM

日本とヨーロッパの自転車の違いについて目に付いた点をまとめてみよう。

 まずは日本

・ほとんどの自転車が歩道を走っている
・道の右も左も関係なく走っている
・電話しながら、2人並んで話しながら、歩道爆走、などマナー最悪
・1万円前後の安い自転車が主流
・最寄りの駅までや近所への買い物など短い距離での利用が主流

 次はヨーロッパ。上の項目と対応するように並べてみる。

・自転車は自転車道(レーン)かそれがないときは車道を走る
・車が右なら自転車も右
・電話しながら、2人並んでなども多少いるが、マナーは比較的いい
・5万円以上のいい自転車が主流
・街中やその周辺程度ならどこでも自転車で行くなど、利用距離が長い

 なぜ、こうも違うのか?
 その大きな理由として、日本では歩道を走ることが事実上推奨されてきたことがある。
 日本でも40年程前までは、自転車は当たり前に車道を走っていた。そして、そのころの自転車は、今とは所得の違いもあるが非常に高価なものだったはずだ。
 しかし、1970年代に車と自転車の事故が増えて道路交通法が改正され「自転車通行可」の歩道なら自転車は通ってもいいことになった。通ってもいいと言っても歩行者に危害を加えないように「徐行」しなければならない。警察庁によると「徐行」というのはすぐに止まれる時速7.5km程度のスピードだそうだ。歩道通行可といっても自転車は車道が原則なのに替わりはなかったはずだが、警察官は歩道を走るように誘導し、やがて「自転車は歩道を走るもの」という意識が広がっていった。
 自転車が歩道を走るとどうなるか? 歩道には段差もあるし当然歩行者が歩いている。自転車はスピードが出せない。スピードが出せないから、ゆっくり走ってすぐに止まり足が付けるように、サドルの低いママチャリが主流になった。また、どうせスピードが出せないんだからと自転車の性能も求められず、自転車の価格と質はどんどん低下した。安くて質も悪い重い自転車が当たり前になり、自転車とはその程度のものと皆が思うようになった。
 歩道を走るから歩行者の仲間だと思われ、歩行者なら道の左右どちらでもいいし、電話しながらでも2人並んで話しながらでも問題はない。また、歩道を走る権利があると思っているから歩行者にも配慮しない。安いものだから平気でその辺に停めて「盗られたらまた新しいものを買えばよい」となる。
 ルールを守らない、マナー最悪、自転車の質の低下、駐輪問題、利用距離が短い、など日本の自転車の問題は全て歩道通行が原因と言っていいだろう。
 また、自転車はスピードを出して走ることで、ある程度車の代替として使え、それでこそ環境や健康にいいものになるのだ。歩道をゆっくり走っていたら歩く代わりにしかならず車に取って変わることはできないし、歩く代わりに自転車を使ったら運動量はむしろ減ってしまい健康にもよくない。
 さらに近年の研究成果で、実は車道より歩道を走る方が車から見えにくいため、車からすると交差点で自転車が突然飛び出して来て事故になりやすいということがわかってきた。
 そして、ようやく各地で車道に自転車レーンを設置する動きが広がり始めている。「自転車は歩道」という意識を変えるには時間がかかるだろうが、自転車が車道を安全に走れることが当たり前の社会に向けて着実に取り組みを進めていかなければならない。

執筆者

合同会社自転車ライフプロジェクト 代表 藤本芳一


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